ヒポポタマス尾野
ベリーベスト太郎です。
「人生で受ける精神的苦痛の半分は、満員電車で受ける。」
これは今の世の中を強かに生きるすべての社会人が、通勤中に一度は心の中でそっとつぶやく言葉。
「奥詰めなきゃ入れないだろ!」
「あぁ、この人次の駅で降りないかなぁ。」
「傘当たってんだけど!!」
満員電車に乗れば、このような声がどこからともなく聞こえてくるような気がする。
もちろん、自分の心の中からも聞こえてくる。
通勤ラッシュは人を狂わす。
普段温厚で噂になっているあの人も、満員電車の中では理性を保てず、つい肘をぐいと強く張る。
張った肘は横に立つ人に当たり、その人はついイラっとして、そのまた別の人の踵をぎゅうと踏む。
革靴にかじられるような痛みに悶える彼は知っている。
なぜこの人が自分の踵を踏むに至ったのかを。
そして、なぜあの心優しそうな人が肘を張るに至ったかを。
すべてはこの高速で移動する直方体のせいであると理解している彼は、
この無意味な苦痛の連鎖を止めるため、自分の唇をきゅっと噛み締める。
「これでいいのだ。これですべて終わるのだ。」
彼は湿気たマスクの中でそうつぶやき、今日もどこかへ運ばれる。

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