意図を汲み取るということ

皆様、こんにちは!

育成社員のよこちんです。


僕たち育成社員はほぼ毎日1〜2時間ほど研修時間が設けられています。

そこでは業務に必要な税務の知識はもちろん、

様々なビジネスコミュニケーションについても教えてもらえます。


先日の研修では、講師の方から

「相手が何を求めてその質問をしてきているのか、

言葉の表面だけでなく真のニーズを汲み取って打ち返すことが税理士として大切である」

と教えていただきました。


確かに、ただでさえややこしい税金の話を真面目に全部説明されたら誰だって嫌になります。

「相手がいま何を聞きたがっているのか」を見極め、

余計な説明を削ぎ落としてシンプルに答えてあげることこそが、プロとして一番の親切なんだろうな

と腑に落ちました。


感銘を受けた僕は、その日一日「相手の意図を汲み取る男」になろうと心に決め、

退勤後に通っている大学院へと向かいました。


授業までに1時間ほど時間があったので食堂で時間を潰していると、

ゼミの先輩のAさんがやってきました。

僕の腕元をチラッと見た先輩は、開口一番こう言ってきたのです。


「その腕時計いいな」


……ん? 僕が着けているのは、時間を知るためだけに買った何のこだわりもない安時計です。

褒められる要素など1ミリもありません。


怪訝に思って視線を落とした瞬間、その違和感の正体に気づきました。


先輩の左腕。

なぜか左腕だけ不自然にたくし上げられたジャケットの袖口。

そしてテーブルの上にこれ見よがしに鎮座し、

蛍光灯を反射してギラギラと鈍い光を放つ重厚な金属の塊。


そう、この場合の「その腕時計いいな」は、「先輩も良い時計してますね」のカウンター待ちなのです。


ここで普通に「ありがとうございます!」と流してしまうのは、相手の意図を汲み取れない二流の人間です。

だが、今日の僕は「相手の意図を汲み取る男」。

不本意ながらその意図に応えることにしました。


「ありがとうございます!でも……Aさんの時計めちゃくちゃ高そうですね!」


すると先輩は、待ってましたと言わんばかりに

「これな、20万円したんだよ。ここのブランドの……」と、

ゼミ前の貴重な休憩時間が「サンダルでブランド店に入ってやった」という

謎の武勇伝を浴びせられる高カロリーな時間へと変わりました。


挙句の果てには、


「それに引き換え、お前の時計どこの? 男は手元を見られるんだから、

ちゃんとした良い時計つけなきゃダメだよ」



……えっ? さっき褒めてたじゃん。


自分の時計を見せびらかすために適当に褒めておいて、気持ちよく喋りすぎた結果、

その設定を忘れてただのダメ出しに変わるという驚異のサイコパス展開。


「一流のビジネスマンは時計で信用を買う論」を延々と熱弁され、ゼミの開始直前まで追い詰められた僕は、

この地獄を終わらせるべく、意を決して切り出しました。


「Aさん、もう18時になりますけど、時間大丈夫ですか?」

(=もうゼミが始まります。いい加減に話を終わらせて解放してください)


これ以上ないほど角を立てずに放った、完璧な「大人の気遣い」。 

すると、さっきまで満面の笑みで喋り倒していた先輩がピタッと止まり、

スッと真顔になって僕の目を見てこう言ったのです。



「……お前いま、『話長いから早く終われ』って思って言っただろ」


……いや、察する能力はあるんかい!


「い、いえ!そんなことないです!」と必死に手を振りながら、

こんな先輩ですら人の裏の意図を正確に察知できるのだから、

社会人というのは誰しも言葉の裏を読むセンサーを標準装備しているのだと心底思いました 。


相手の表面的な言葉に振り回されず、その奥にある真のニーズを正確に汲み取って打ち返すこと。

社会人として生き抜くための必須能力を、身をもって痛感した一日でした。


皆様も言葉の裏にある「意図」には、どうぞお気をつけてお過ごしください!


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